もう幾度となく言われてきましたが、レコード→CDの時に失った「ジャケットアート」。しかし、CDは新たなパッケージの可能性を生みました。
しかし、今度の場合パッケージそのものがなくなってしまうのですから、話が違います。一体どうなるんでしょうかね?
本はテキスト情報だけじゃなくて、触感や匂い・色・文字の形・行間の幅などそれ以外のリソースも持っていて、それらの相乗効果で一層美味しくいただくものですから、それをどうやってデジタルで再現するか・もしくは新たな「味」を出せるか、が重要でしょう。
今までも何度か書きましたけど、これからは「パッケージ製品」というのは贅沢なものになっていくに違いない。そんな時代でもその贅沢さを味わえるような目は養っておきたいなぁと思います。
今回はそんな「モノ」としての本に関する本を集めてみました。
本を作る際の具体的な技術である「紙・綴じ方・タイポグラフィ・レイアウト」などについての本。
装幀というテーマでは祖父江慎氏がフィーチャーされています。彼の「杉浦茂マンガ館」の装幀についての以下の言葉、
「(略)今回は当時の雰囲気を大切に、さらに事情が許せばこうしたかったのに、当時はできなかったんだろうなという状態を想像してそれを定着させたんです」
う〜ん、素晴らしい。最近の砂原氏のリミックス仕事における哲学と同じですね。
また、国立国会図書館資料保存課の本の修繕について書かれたところが面白い。丁寧に作られた昔の本っていうのは装幀を補修さえしてやれば読めるようになる、というのがまるでお母さんの服を仕立てなおして着てる娘さん、みたいでなんかいいなぁと思います。ただ、自分の本棚を見渡してもそんな丁寧に作られた本ってないなぁとも気づいたり。
次は具体的な装幀家たちの本を紹介します。

「和田誠 装幀の本」(リブロ)

「平野甲賀 装幀の本」(リブロ)

「シリーズ〔日常術〕2 平野甲賀〔装丁〕術 好きな本のかたち」(晶文社)

「菊池信義/装幀談義」(ちくま文庫)
この本を読むと、彼が本と人との出会い方を深く、しかも観念に陥らずあくまで具体的に考えているのが分かります。中でも素材の話が一番面白くて、確かに本って、読むものである前に触るものだなぁと思いました。子供の頃から双子の弟と「感触いい」という言葉を使っていたけど、それはイメージも含んだ「感触」のことで、「パッケージ」はそういう「触感」が重要ですね。菊池氏の「手だけではなく目にとっても『触感』がある」という話は面白いと思います。
パッケージという面から見て、レコードがアナログからCDになって変わったのは「大きさ」もあるけど、その触感が一番変わったんだと思います。CDはプラスチックケースに入れられているから、質感に工夫がしにくいですよね。その点、本は紙ですからその質感が持つ表情も生かせるわけで、紙パッケージCDがうれしいのはそういうわけかもしれません。
これからもう少し日常の中でも「触感」を意識したいと思います。
さて、ここまでの本は親父の本棚を眺めて「おっ」と思ったことがある、いわば一世代前(もちろん現役ではあるんですが)の方々ですが、90年代〜で有名な装幀家の一人(?)が「鈴木成一デザイン室」でしょう。詳細は知らないのですが、鴻上尚史率いる劇団「第三舞台」がアマチュア劇団だった頃からずっと宣伝美術を担当しているようです。
ここが出がけた本を見ていきましょう。
この本は、書店で見たときからシビれまくりました。ジャケの質感・色・フォント、すべて目を引きます。
これもカバーが透き通っているような(多分)凝った印刷がなされています。色使いもキレイで現在出ている3冊を並べた色合いもいいです。シリーズものならでは。
ミステリ作家・森博嗣氏のインターネットエッセイを本にまとめたもの。僕はこの人が書くミステリ作品にはあまり興味がないのですが、講談社ノベルスの表紙デザインはかっこいいなぁと思っていました。このエッセイ集もかなり凝った作りになっていて、思わず手に取らされたんですが、本好きの弟に見せても「なんか感触のいい装幀だね」と言ってました。読んでみると中身も面白くてエッセイストとしてのファンになりました。こういう読者と作者をつないでくれるのは装幀の大きな役目ですよね。
最後に「装丁家 人名辞典」にリンクをはっておきましょう。
(2000/12/17)





