自伝の基本中の基本。これを読まずして自伝を語る事なかれ!永ちゃんは偏見を持たれやすい人だと思いますし、僕も色眼鏡で見ていました。それがテレビでウェンブリースタジアムのドキュメントを見て一発で魅了されました。音楽性は特に興味ないんですけど(笑)、人間的に面白すぎます。
とにかく「ハングリー」な人で、その頂点を目指すさまが嫌みにならないところも永ちゃんの人気の秘密なのかなと思ったりします。広島から出てきてキャロル結成〜ソロでの成功までの物語。とにかく騙されたと思って読んでくれ、としかいいようがありません。
改めて書くまでもなく本のプロデュ−スは糸井重里。
さて、成りあがった青年は20年後どうしているのだろうか?まさに絶頂期であった「成りあがり」から自分を失い、裏切り、挫折を経て……彼は変わらず上を向きながら歌い続けています。
僕が最初に彼に興味を持ったウェンブリースタジアム「SONGS&VISIONS」でのエピソードや、アメリカ進出の失敗とレコード会社、自らプロデュースを手がけるところなど具体的な話が多いのも特徴。
正直、「成りあがり」を越える内容ではないけど、あれから20年経ってこういう本を出せたことが、より「成りあがり」に説得力を持たせることでしょう。
「ウルトラセブン」の元祖ヲタクのアイドル・アンヌ隊員を演じたひし美ゆり子の自伝。本当に自分で書いているのでしょう、文章が荒れて内容が重複してたりと本としては不完全な感じがします。でも自伝としてはこの方が面白かったりもします。
古本屋でなんとなく買いましたが、一番面白かったのがウルトラ世代のヲタクの思い入れが強いアンヌ自身はそんな意識が全くなくすごい天然の人だったことです。こういうのは痛快ですね(笑)。

「ジャッキー吉川/ブルー・シャトウは永遠なり」(近代映画社)
ジャッキー吉川の自叙伝。自殺してしまったブルーコメッツの井上忠夫=大輔の追悼本でもあり、あまり知らなかった彼の素顔を知ることができる。
ブルーコメッツがGSの中でも音楽的にしっかりしていた、とか言われるのでそうなのかぁと思ってたら、ほとんどのメンバーが音楽の勉強をしたわけではなくそれほど実力派ってわけでもなかったようだ。逆に他のグループと比べてもルックスに特徴はなく、ライバルのスパイダースのように名ボーカリストがいるわけではない。基本的に伴奏専門のバンドがここまで有名になれたのはやはり井上忠夫のソングライティング能力によるものなんでしょう。彼の書く曲はどこか下世話でそこがすごく好きなんですが、あのセンスはなんなんだろう。彼は非常にオシャレで、新しもの好きだったとか。目立ちたがり屋でもあった。多分サービス精神旺盛な人だったんじゃないか。あと、育ちのよさを感じます。
でも、この本で一番驚いたのは「ジャッキー吉川」の本名が「板岡公一」ってこと。全然違うじゃん!
この他に芸人系・スポーツ系の自伝は、それぞれ別のコーナーで紹介しています。
(2001/05/13)
浅井慎平の自伝的小説。
植草甚一、久保田二郎、高平哲郎、伊丹十三、植草甚一、寺山修司、タモリ、渥美清、石原裕次郎らが実名で登場、と聞いて読んでみたもののそれ以前に小説としての面白さに欠けていて、挫折。自伝って気取って書いたらつまんないものになってしまうけど、これがその最たる例だと思う。
70年代のサブカルチャーにもっと興味があれば楽しめたのかもしれないけど。
イラストレーター/デザイナー/装幀家/映画監督(「麻雀放浪記」「怪盗ルビィ」など)etc.とマルチな肩書きを持つ、若い人には平野レミの夫、トライセラトップスのボーカル和田晶の父といった方が分かるかもしれない和田誠のブレイク以前の自伝。ブレイクといっても、先にあげた数々の分野で才能を発揮する以前というだけで、その頃既に「ライトパブリシティ」なる広告会社にてデザイナーとして十分活躍しているのだが。例えば現在もあるタバコのhi-liteのデザインはこの人の手によるものだったりして、コンペのエピソードなんかも載っている。また今は亡き「社会党のマーク」や「NHKみんなのうた」のアニメーション制作も手がけていた。
こういった逸話が中心に書かれているんだけど、恐ろしいというか呆れるのは登場する面々の豪華さ。
田中一光、杉浦康平、粟津潔、宇野亜喜良、谷川俊太郎、土屋耕一、寺山修司、植草甚一、高橋悠治、武満徹、横尾忠則、立木義浩、篠田正浩、丸谷才一、三島由紀夫、柳家小ゑん(立川談志)、篠山紀信、秋山晶……。
一貫したスタイルというか共通するポリシーを持っていると思われる面子。これって昭和モダニストのリストか?彼らと仕事をしたり何かの縁で出会ったり……、っていう60年代の銀座ってのは一体どういう時代と場所なのか、うらやましいというか恐ろしいというか。もっとも和田誠自身にそれだけの実力があったということなんだろうけど。
60年代のデザイン界・広告界・サブカルチャー界に興味があったら是非読むべき一冊。
横尾忠則の上京後、青年時代の自叙伝。これ以前の10代の頃の自叙伝は「コブナ少年」(文春文庫)で。
和田誠が「銀座界隈ドキドキの日々」で、日本デザインセンターにいた横尾忠則のことを羨望のまなざしで見ていたが、逆に彼は和田誠のポジションをうらやましく思っていたのが面白い。当時のイラストレーター・デザイナーなどのグラフィック界がまだまだ黎明期で、いろいろな新しい試みが行われていたことが分かる。
しかし、田中一光、宇野亜喜良といった、有名デザイナーと仕事をともにしながら、徐々に広告デザイナーという枠からはみだしていく横尾忠則の心情が面白い。イラストレーションはもちろん、演劇・ハプニング・アート・映画・テレビ出演……。寺山修司との出会いが彼の活動を大きくはみださせ、それが決定的となったのが三島由紀夫との交流。彼は三島の大ファンだったにもかかわらず、その性格からつき合い方にずうずうしいところがあっておかしいんだけど、その頃から神秘的な方面へ傾倒していく。
……と本でいうと真ん中あたりまでグイグイ読ませられたんだけど、その頃から幽体離脱・UFO・インド……などそういった話題が多くなっていて、読み切れなくなってしまった。
ただ前半だけでも、十分読む価値あり。業界全体が熱かった日本デザイン界とそこには収まりきらなかった横尾忠則の暴力的なオリジナリティの片鱗が分かる。またこういう本のもう一つの楽しみである、ビッグネームたちのの無名時代の交流エピソードもやはり読みどころ。
パート2以降の「ルパン三世」の音楽を手がけたことで知られる作曲家・ジャズミュージシャン大野雄二の自伝。
僕は彼のファンで、でもそのプロフィールって「レコード・コレクターズ1996.7月号 TVサントラ特集」で触りだけ知った程度で、ジャズミュージシャンとしてどれぐらい活躍したのかとかは全然知らなかった。
この本はそんなことは当然として、大野雄二が熱海の老舗旅館・大野屋(「おもひでぽろぽろ」で主人公・タエ子がのぼせたところ)の次男坊、ってことまで分かってしまう、まさに大野雄二読本。
そんな坊ちゃんだからか高校から慶応で、同級生にジャズピアニスト佐藤允彦、武藤兵吉(石坂浩二)なんてのがいたりする。大学で名門ライト・ミュージック・ソサエティに入るんだけど、3年後輩に村井邦彦が。ジャズ喫茶で一年先輩の青学・渡辺栄吉(=筒美京平)と知り合っていたり。大物・有名人がゾロゾロ出てきてクラクラする。
大学の途中からプロのミュージシャンとして全国をまわるんだけど、ふと自分のジャズはオリジナルではない、と気づき、CM音楽の世界へ。CMやTV音楽の面白さと難しさについて語る部分は、さすがにその世界の大御所だけあって読ませる。ちなみに音楽的なルーツは、バカラックよりもデイヴ・グルーシンというのはちょっと意外だった。
「ルパン音頭」で共演した三波春夫のエピソードをはじめとしたいろんな裏話も読みどころ。
豆知識として、ソニア・ローザの息子はJ-WAVEでナビゲーターをしているDJ TARO、80年代に特撮・アニメ系の曲を吹き込んでいた「Mojo」は作曲家でもある富田伊知郎氏、などもこの本で知った。
巻末のカラーのジャケ写真が載ったディスコグラフィー、作品年表などもいい仕事。ただし、あまり必然性を感じない添付DVDのために値段が高くなっているのが残念。
(2004/12/2追記)






