[disc 1]
- Hello Baby
- Forget Me Nots
- Hyp
- Lotus Snack and Thinking Machine
- Sweet News
- Sekar Gendot (Traditional)
- Forget Me Nots (SP-1200 Remix)
- Another Sound Museum
[disc 2]
- A Night of UBUD
このアルバムがベスト、っていうのもなんだか微妙なセレクトだと自分でも思うんだけど、今でもよく聴くし、聴く度に「素晴らしいッ!」と思える。
テイ・トウワの、特に「Sweet Robots Against The Machine」名義の作品を聴くってことは、雑誌を読む、いや眺める行為に近い気がする。もっというと、気の利いた喫茶店なんかにおいてあるフリーペ−パーをお茶しながら眺める感じ、と言った方がいいか。
僕はフリーペーパーだけでなく、パンフレット・チラシの類いが好きで、買う気がない商品や観る気がない映画のチラシでも気に入れば持ち帰り(なぜか2枚拝借する)、手持ちのファイルにストックしておく。そして、なんにもする気が起きない時なんかにパラパラと眺めるのだ。そういう時、やたらと幸せな気分になる。
雑貨屋をブラつく時にも同じことを感じる。僕は雑貨屋が好きなわりにそこで売っている雑貨自体はあまり買わないという、店側にとっては迷惑千万な客なんだけど、あの人生にとってはどうでもいいようなカラフルな品物がきれいに並べられているのを見るのが好きなのだ、きっと。
こういう時に感じる「小さな幸福感」がこのアルバムには詰まっている。それはこのアルバムが小品集だからだけじゃないはず。テイ自身もこの作品を
「<スナック菓子みたいな音楽ですね>って言うから、それいただきって感じで、スナック=スウィートでしょ。」(bounce1997 1・2月号)
と語っているけど、つまむのにちょうどいい食感とボリュームを意識した発言だろう。その盛りつけが熟考されているからこそ、おいしい。フリーペーパーにはそれにあった長さ・内容の文章があると思うんだけど、このアルバムもそれぞれの曲がテイ得意のエディットセンスでレイアウトされている。だから1曲だけ取り出してもそんなに面白くないけど、この曲順で並べられてこそ生きてくる。雑貨屋のレイアウトも同じ理屈だ。
ちなみにSRATM名義のセカンドアルバム発表時のインタビューで本人がこう語っている。
でもエレクトロニカの多くは秋葉原止まりというか、すごい自閉的な感じがしますよね。それよりは、若い女の子が雑貨屋さんでロウソクを買ったりするような感覚で聴いてほしいなっていう
つまり彼のアルバムを聴くことは、そういった「レイアウト感」を楽しむことでもあるんだと思う。
そんな編集的魅力は彼のすべての作品にあるんだけど、このアルバムに顕著なのは「まかないめし的美味」、である。
まかないめし、ってのは料理屋などで店のアルバイトなんかに出す、その日あまった材料なんかで作った料理のことだけど、これが独特のうまさを持っている。僕も飲み屋でバイトしていた時に食べさせてもらったけど、これがうまいんだ。ちょっとお金を取って食べさせるには下世話かな、っていう味なんだけど、実用的なおいしさというか。子供の頃、日曜の昼にだけ冷蔵庫の余り物で親父が作る焼き飯や焼きそばと同じような味がした。
このアルバムは2ndソロアルバム「Sound Museum」を作る課程ではみでたトラックや素材を利用して作った作品なので、実際「まかないめし」なのだ。
さて、このアルバムが出た1997年という年は、振り返ってみると自分の音楽観がかたまった時期でもあった。その頃の僕は、渋谷系に代表されるセンス一発勝負の作品も好きだけど、テクノなどのミニマルミュージックの持つトリップ感にもまた熱中していた。だけど、それらの音楽を両立して聴いてる人などあまり周りにはいなくて、僕もなんとなくラブコメの主人公状態のようなどっちにするの?的な気分ではあった。
もちろん、リスナーなんだからどっちも聴いてりゃいいんだろうけど、「ラーメンとカレーが好きだからカレーラーメンが食べたい」と考えてしまう欲張りな自分は、どちらの要素も持った音楽を歓迎したい気分ではあった(なんか食べ物の話ばかりだな)。
このアルバムや砂原良徳「CROSSOVER」などはそんな優柔不断な自分の音楽観を肯定してくれた、という意味でも自分にとっては大事なアルバムだ。
あと書いておきたいのは、CDのオビや背中のフォントのチョイスも含めたジャケット。僕の友人が「このアルバムの内容はそれほどでもないけどジャケはかなり好きだ」と言ってたけど、確かにかっこいい。この白の使い方はなかなか出来ないのでは、と思う。
ちなみにこのスーパーモデル・クリスティを撮ったマリオ・テスティノの写真は、彼が買い取ったものだそうで、その額なんと700万円。アルバム制作費の7倍だとか。
テイ・トウワちょっといい話。
(2003/06/23)
