ヒップ・ポップ
「de la soul/3 FEET HIGH AND RISING」


  1. Intro
  2. The Magic Number
  3. Change In Speak
  4. Cool Breeze On The Rocks
  5. Can U Keep A Secret
  6. Jenifa Taught Me (Derwin's Revenge)
  7. Ghetto Thang
  8. Transmitting Live From Mars
  9. Eye Know
  10. Take It Off
  11. A Little Bit Of Soap
  12. Tread Water

  1. Potholes In My Lawn
  2. Say No Go
  3. Do As De La Does
  4. Plug Tunin' (Last Chance To Comprehend)
  5. De La Orgee
  6. Buddy - (with Jungle Brothers/Q-Tip)
  7. Description
  8. Me Myself And I
  9. This Is A Recording 4 Living In A Full Time Era (L.I.F.E.)
  10. I Can Do Anything (Delacratic)
  11. D.A.I.S.Y. Age
  12. Plug Tunin' - (original 12" version)
 
de la soulの1st「3 FEET HIGH AND RISING」を聴いて一番驚くことは、「ブラックアメリカンにもこういうポップセンスがあったのか」、これに尽きる。もしも、彼らのストリートにガチャポンがあったなら、きっと側を通る度にコインを投入→その戦利品をターンテーブルの側に飾っているに違いない、そう思わせるようなところがある。

もっとも大学生の頃一番最初に図書館で借りて聴いた時には、この魅力はよく分からなかった。そもそもヒップホップ自体いまだにそんなに興味がないし。
その後、再びde la soulの名前に注目したのは、小西康陽が「ピチカート・ファイヴ/月面軟着陸」は彼らの1stアルバムに影響を受けた、と語っていたのを知った時だ。「月面軟着陸」は様々なポップ・ミュージックの様式がコラージュ的に展開される大好きなアルバムだけど、それが何であのヒップホップのアルバムと関連性があるんだ?と疑問に思って、再度TSUTAYAでレンタルしてみた。

あぁ、なるほど……!

一聴してその意味が分かった。分かりやすかったのがスティリー・ダンの「PEG」をサンプリングしていることだった(9曲目)。まさかAOR(というと怒られるか?)のフレーズをサンプリングしてラップをするとは!(もっとも後にこういうことはけっこう例があることを知ったけど)
フランス語の教則テープと思われるソースのサンプリングをはじめ、音楽というより音遊びのような短い曲が延々と続くコラージュ感。おそらくたわいもない日常会話をラップにしていることが窺える声質というか口調というか。確かに「月面軟着陸」に多大な影響を与えたのも分かる内容で、一発で好きになった。こういう、ある人の一言でその面白さがパッと分かることは時々ある。
もちろん日本のヒップホップ界におけるスチャダラパーの存在も、彼らの音楽性への理解を早めてくれたのは言うまでもない。

最初に書いたようにこのアルバムを聴くまで、こういったヒップホップの中に自分が共感するポップ感覚を持ったユニットなんてないと思っていた。
こうなってくると他にもこの手の作品を探したくなるのが性で、de la soulと同じネイティブ・タン一派であるA TRIBE CALLED QUEST、JUNGLE BROTHERSなど聴いてみるものの、何か違う。というかde la soulのこれ以外のアルバムですらピンとこない。1stはプロデューサーのプリンス・ポールの力に負うところが大きいらしいし(もっともそのプリンス・ポールのソロアルバムでもこういうポップ感はあまりないと聞くから、これはまさに一期一会なアルバムと言えるのかも)

例えばこのパビリオンで最初に紹介した「SRATM/1st」にも同じポップ・コラージュ感が溢れているのはもちろんなんだけど、ポップとは違うけど初期渋谷系に通じるクールな感じが好みで愛聴しているのが「DIGABLE PLANETS/BLOWOUT COMB」。
この後、しばらくこの手のアルバムにはお目に、いやお耳にかかれなかったんだけど、最近になって友だちが紹介してくれたアルバムがまさにこの“de la soulの1st”に通じるものを持っていた。最初の数曲を聴いて「買う!」と思わせられたそのアルバムは「Ugly duckling/taste the secret」。ライナーによると西海岸の白人三人組らしいんだけど、そのユニット名(「みにくいアヒルの子」)のヒネた感じからして、マッチョ度0%。日本盤ライナーにも「de la soulの1stに通ずるパーティ感」などと書かれていてやっぱりな、と思った。

その後、de la soulの1stのCDは偶然人からもらうことができたんだけど、この手の90年前後のサンプリング主体のアルバムはヘタをすると再発される時に著作権の関係から曲が削られたりすることがあるので注意が必要だ。例えば先ほどの「ピチカート・ファイヴ/月面軟着陸」の現行盤はリマスターと引き替えに、サンプリングではないけど奥田民生がラップをしているトラックが丸ごと削られている。
de la soulの1stが持つ過剰なコラージュ感が他の作品にはなかなか見られないのは、当時のみ可能だったゲリラ的なサンプリングに負うところも大きいのかもしれない。

(2003/08/17)