- Black Cow
- Aja
- Deacon Blues
- Peg
- Home At Last
- I Got The News
- Josie
タバコを吸った時?
酒を飲んだ時?
成人式の時?
はたまた子供が生まれた時?
僕自身がしみじみと「大人になったなぁ」と思ったのは、牡蠣をおいしいと思った時かも知れない。
子供の頃は苦いわグロテスクだわ、あんなものをおいしいというのがよく分からん、と思ってたけど、いつの間にか牡蠣フライ定食を注文している自分に気づく。
生でもフライでも、苦みこそがおいしい。
スティーリー・ダンの魅力が分かった時と言うのは、こういうことに似てると思う。
もちろん、スティーリー・ダンの音楽に苦みやグロテスクさを感じてたわけではないけど、初めて学生時代に聴いた時は、正直特に面白いとは思えなかった。というか、退屈なだけだった。とくにフックもない、新しさもない、平凡な音楽。
だけど、いろんな音楽を聴いているうちに、再び、偶然、スティーリー・ダンをCDトレイに載せる時が来る。
「これ、好きじゃなかったんだよなぁ」
そう思いながら、再生ボタンを押す。
あれ?と思う。
こんなにみずみずしい、まさに「美しい」という言葉を使いたくなるような音楽だったんだ。あぁ、でもずっと前に聴いた時はこの「味」は分からなかったのか。
自分が変わったのか?
もちろんそれもあると思う。
前よりも広くいろんな音楽を聴くようになったこともある。
でももっと直接的なきっかけがあった。
このアルバムに入っている「PEG」を、前回取り上げた「de la soul」がサンプリング、福富幸宏がカバーしているのをそれぞれ聴いたことが大きかったのだ。それらによって、聴く上でのヒントをもらったというか。
de la soulが取り上げたことは、HIP-HOPでも通用するリズムを持っていること、福富幸宏が取り上げたことは、ガラージュハウスでも通用するメロディの高揚感を持っていること。
そのヒントを横において聴いてみると、なるほど、「PEG」だけでなく、他の曲も素晴らしい。腰にくるグルーヴがありながら、美メロと不思議な色彩を感じるコーラスが視覚に訴えるような快感を与えてくれる。
何度も聴くうちに、このアルバムが大好きになった。晴れた日曜の午後に聴く音楽で、これほど贅沢になれるものはちょっとないと思う。
2000年に出た紙ジャケリマスターで買い直したぐらいだ。
さて、このアルバムの構成に関しては、ちょっと面白い話がある。
僕はこのアルバムは4曲目の「PEG」までがアナログレコードでいうA面、5曲目の「HOME AT LAST」からがB面だと信じていた。というか当然そうだろうと思いこんでいたので、他の可能性など考えもしなかった。その上で、「ちょっとこのアルバムは後半が暗いのが残念」という感想を持っていた。
ところが、2003年8月号の「レコード・コレクターズ/スティーリー・ダン特集」を読んでいると、3曲目の「DEACON BLUES」までがA面で、4曲目の「PEG」からがB面、とクレジットがあるじゃないか!
なるほど。
「DEACON BLUES」と「PEG」の間に一呼吸あってこそ、このアルバムはバランスが保たれる。確かにそうだ。B面は「PEG」から始まってからこそ、その後の曲が生きてくる。
今のレコードにはない、アナログ時代ならではのアルバム構成の必然性に新鮮さを覚えたCD世代の僕だった。
ちなみに、このアルバムが気に入った人は「メイキングDVD」もぜひ見てほしい。このアルバムが持つマジックを垣間見て、気分は魔術師の弟子。
(2003/10/19)
