十年一昔
「Orbital/2nd(Brown Album)」


  1. Time Becomes
  2. Planet Of The Shapes
  3. Lush 3-1
  4. Lush 3-2
  5. Impact (The Earth Is Burning)
  6. Remind
  7. Walk Now...
  8. Monday
  9. Halcyon + On + On
  10. Input Out
2002年には今回紹介するOrbitalが、今年2003年はUnderworld・Chemical Brothersがそれぞれベストを出して、今まさに90年代テクノに大きなピリオド(not終止符)が打たれたのかもなぁ……なんて思った。

今からもう8、9年ぐらい前になるだろうか。当時、日本でじわじわとテクノブームが起こった。
それ以前ってサブカル音楽の象徴的存在がネオアコ組のフリッパーズ・ギターだったことからも分かる通り、エレクトリック・ミュージックってジャンルはYMOムーブメント以降すごくマイナーだった。ジュリアナがはやってたぐらいか?いや、ホントに普通のレコードでテクノのコーナーなんてなかったのだ。せいぜい808ステイトなんかがおいてあるハウス・コーナーがせいいっぱい。

それ以前のテクノといえばその808ステイトとかがその代表選手だったけど、僕は苦手だった。当時はミニマルっぽい展開な曲が気持ち悪く感じたってのもあるけど、今でもいいとは思えない。他のSHAMENとか90年代初期のブリープ系テクノってのはやっぱり全然好きじゃない。
だものでネオアコとかニューウェーヴ系の音楽をメインに聴いてたけど、やっぱりどこかで物足りなさを感じていた。

そんな折り待ってましたとばかりにテクノ・ブームが起こるんだけど、実は最初はついていけなかった。
まず、今でもそうだけど、僕はアンビエント・ミュージックが聴けない。リズムがない音楽がとても苦手なのだ。だものでThe Orbなんてどこがいいのかよく分からなかった(今でもよく分からないけど)。「Extra」以前のケン・イシイとかも気持ち悪いだけで、自分でもシンセをいじってたからユニークなのは分かったものの、楽しむという言葉からはほど遠い状況だった。R&SやWARPが提唱する“インテリジェント・テクノ”ってのも何がいいのかさっぱり分からなかったし、そもそも「デトロイト・テクノ」がいまだに面白いと思えない。当時はデリック・メイの「ストリングス・オブ・ライフ」って曲が異常なくらい神格化されて語られてたけど、はっきり言ってすごいダサい曲だとしか思えない、いまだに……。

でも、明らかにブームだった。
例えば今ではアニメ特集ばかりしている「TV Bros」は当時紛れもなくテクノ雑誌だった。スタジオボイス1995年7月号は「テクノ・ザ・バイブル」というテクノ特集だった(ケン・イシイの「Extra」リリース直前ぐらい)。ソニーマガジンズからは「ピコ!」なんていう(多分)2号で終わったテクノポップ寄りのムックはでるし。ドラムン・ベースがまだジャングルと呼ばれていて、ヒップホップがTVから聞こえてくることなんてなかった時代。

前にも書いたことがあるけど、この頃は80年代のテクノポップと90年代のテクノが混同して語られたりして「テクノ」というジャンルが混乱を極めてた印象がある。YMOとかP-MODELの再結成なんかもあったりして、なおさら事態をややこしくしてたような。もっとも僕自身も最初はこれらを一緒な流れで捉えてたんだけど、その混沌ぶりを分かってほしいので僕が当時買ったアルバムの一部を時系列で並べてみた。

91年??月KRAFTWERK「THE MIX」 
92年02月P-MODEL「P-MODEL」テクノ宣言をして復活
92年11月ヤン富田「MUSIC FOR ASTRO AGE」初ソロアルバム
92年??月この頃AlfaがYMO関連CDを山のように出す 
93年05月YMO「TECHNODON」再生
93年12月電気グルーヴ「VITAMIN」テクノ宣言
93年??月ELECTRIC MUSIC「ESPERANT」元クラフトワーク・カール・バルトスのソロプロジェクト
94年10月TOWA TEI「Futere Listening!」リリース当時はそれほど評価されてなかったような
94年??月TELEXの1st・2ndがCD化リミックス盤も出ました
94年??月TRANSONIC RECORDS「TRANSONIC(970-1450km/h)」テクノポップ系インディレーベルだったTRIGGERがTRANSONICと名を変え、クラブ・テクノ化して迷走。その後無理が生じて電子音響などへと路線変更する。ちなみに当時は他にもSYZYGY、DUB RESTAURANT、FROGMAN、SUBLIME、TOREMA、SUB VOICEなど数多くのインディテクノレーベルがあった。今いくつ残ってるのだろう?
95年08月石野卓球「DOVE LOVES DUB」初ソロ・アルバム、大友克洋ジャケ
95年08月砂原良徳「CROSSOVER」初ソロ・アルバム
95年11月ケン・イシイ「Jelly Tones」「Extra」がPV含めてヒット
97年02月Sweet Robot Against The Machine第1回でとりあげたテイ・トウワの変名プロジェクト
かなり個人的な表だけどここに海外テクノ勢がかぶさってきて、実際全体的なリリース量も多かったし、流行廃りも激しかった。僕は92年に大学に入り上京してきたんだけど、それによりレコードをある程度自由に買えるようになってきたのもあって、なんか大変なことになってるなぁ、と思った。
僕にとっての90年代前半の電子系音楽はこんな感じだった。

よく行ったレコード屋は「ディスクユニオン渋谷2号店」(まだクラブ系の店舗が分かれてなかった)、「シスコ」(テクノ店なんてなかった)、「WAVE渋谷店」(当時は面白い店だったんですよ)などなど。でも、もうどの店も行ってないなぁ。けれどそれらの店にはかなりワクワクして行った。いつもなんか新しい・刺激的なレコードと出会えるような気がした。

そんな中、いろいろ聴いていくうちに(というほど聴いてなかった気もするけど)好きなアーティストがいくつかできた。その一つがOrbital公式サイトで試聴しまくれるんでどうぞ)。その他には、日本人だけどサワサキ・ヨシヒロとか。どちらも基本はミニマルだけどメロディがきれい、ってのが共通だと思う。両者とももう新譜をおっかけたりはしてないけど、当時のアルバムは今でも時々聴く。

特に好きなのが今回取り上げるOrbitalの2nd・通称「ブラウンアルバム」。僕はOrbitalが好きというよりもこのアルバムが好きなのかもしれない。いまだに「Lush 3-1」は鳥肌が立つようなかっこよさがあると思うし、彼らは音作りが凝っているのでイヤホンで聴いても楽しめる。
僕が持ってるCDには、同時期にリリースされた「Peel Sessions」というミニアルバムがカップリングになってるんだけど、時間も短く曲の構成もまとまっていて、これまたいい。僕はOrbitalのサウンドを聴くとその名前のせいからかある球体のまわりをぐるぐると衛星がまわっているようなイメージを受けるんだけど、「Peel Sessions」のジャケットはそのイメージにすごくマッチしてると思う。

ついでに書くと、さかのぼって聴いた1stアルバムもいい。シングルの寄せ集め的な側面があるらしいから、2ndのように一貫した流れは感じられないけどやはりハイファイサウンド+美メロ、という彼らの特徴はこの頃から顕著。

さて、Orbital登場後はエイフェックス・ツインが出てきたりしてテクノが実験色を強めていくのと、その反動からかケミカル・ブラザーズとかロック色の強いテクノが流行ったのとで、僕自身はテクノを聴かなくなっていく。アンダーワールドもラジオやテレビでかかってたらチャンネルを変えない程度には聴くけど、買うほど好きじゃない。それにDJミックスCDなんかを聴いたら、きっとテクノってクラブで聴くのが一番面白いんだろうなぁ……と思わされたりして、いわゆるテクノの「アルバム」を買ったりするのが馬鹿馬鹿しくなってきた、というのもある。
あと、分かる人は分かると思うんだけど、なぜかテクノ・ファンって排他的・選民的なところがあって何かとお勉強的・カタログ的に「聴かなければ」っていう雰囲気があって、そういう聴き方も決して嫌いじゃないんだけどウンザリしたのも事実。あれは電気グルーヴ石野卓球とその取り巻きのテクノ系の評論家の功罪だと思う。

そして肝心のOrbital自体が、僕にとってはこのアルバム以後失速した観があったのだ。待ちに待った3rd「SNIVILISATION」は、かなり肩透かしな内容で本当にガッカリした。PSゲーム「WIPEOUT」の曲も収録された「In Sides」ではちょっと戻った感じはあったけど、2ndの勢いはなかった。続く「The Middle Of Nowhere」はかなり全盛期のサウンドを感じさせたけど、発表時にはその音はすでに古くさく感じた。

こうして一番好きだったOrbitalへの興味が薄れたこともあって、今はテクノ全体からも離れてしまってる(テクノというジャンル自体に勢いがない感じがするんだけれども)。だけど、このOrbitalが全盛を極めた時期の、ビキビキッとアナログシンセが鳴ってるようなサウンドは、今でも脊髄反応しちゃう。

さて、今やサブカル的に隆盛を誇ってるのはヒップホップだろうけど、これらがお茶の間レベルにも浸透できたのはやはり歌詞があったからだろうと思う(あとはヤンキーが聴ける、ってことも大きい)。むしろテクノよりもメロディ感が希薄だけど、やはり声のある・なしは大きい。その点で比較すると、テクノはある意味浸透はしたものの、やはりマイナーなジャンルであり続けざるをえないのかもしれない。
現在のテクノの状況って、当時浸透させようと躍起になってた人たちはどう思っているんだろう?ある程度浸透したと捉えるのか・革命は失敗に終わったと捉えるのか。ま、個人的にはどちらでもかまわないけど。

(2003/11/30)