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98年に久々に来日した際はチケットが取れなかったのと、就職したてでわりとお金がなかったのと、当日ちょっと体調が悪かったのと……と、ともかく行けなかった。
しかし。
いろんな方面からその公演の模様を伝え聞くにつれ、行かなかったことへの後悔はつのった。
いわく、「映像と音が完全にリンクした素晴らしいライブ」
いわく、「あのロボットが生で!」
いわく、「人間だった!」(笑)
……そして、ついに今回のライブで念願がかなったというわけだ。
ライブは噂通りのエッジが立ったクラフトワークらしい内容だったけど、一番感心したのはその「マンネリズム」かもしれない。あぁ、この人たちもう何年もこんなことやってるんだろうなぁ、そしてこういうのが好きで、その「好き」を確信してるんだろうなぁ、と。
今回紹介する「THE MIX」というアルバムはセルフリメイク作品にしてベストアルバムだ。それまでの代表曲を、リリースされた1990年頃のハウス仕様にリメイクしてあるのだけど、僕自身がこれを一番最初に聴いたせいかベストにありがちなまとまりのなさも感じないし、アレンジも無理がない、と思う。逆にさかのぼってオリジナルアレンジを聴いてみたらあまりのアナクロなサウンドにひいてしまった、という笑えない話もある(ゆえに「THE MIX」以前の作品は手元にないという、マニアが聞いたら失笑されそうなファンだけど。)。
しかし、ミュージシャンに限らず何らかのモノ作りに携わる人なら、普通は常に新しいことをやろうとするというか、自分がやってることに飽きてしまったりすることが多いと思うんだけど、このクラフトワークはやりたいことは変わらず、それをどうアップデートしていくかということに腐心しているようにみえる。自分がやっていることが好きじゃないとこれはできない。
だからたとえば一曲大ヒットを出したミュージシャンなんて、ライブでそのヒット曲を演奏するのを避けたりするものだけど、クラフトワークは嬉々としてやる。ニューアルバムを出した今回もそこからの曲は3曲ぐらいで、あとのナンバーは今までとほぼ変わらない。
そしてそういう部分がまた、「伝統芸臭」を感じさせるのだと思う。ただし、ベンチャーズなんかが年齢とともに演奏の勢いが失速していくのと比べると、クラフトワークの「芸」は大衆への気配りを感じさせるというか、悪くいうとミーハーな感じがする。決してあるスタイルを守り抜こうというのではなく、もっといいものがあればいつだってそっちに乗り換えてしまうような身の軽さといおうか。しかし、たとえスタイルを変えてもいつだって歌っていることは同じ、その部分にこそ彼らの本質があるんだと思う。
では、クラフトワークが一貫して歌ってきたこととはなんだろう?
まず間違いないのは、それが「男子的世界観」であることだ。電車・コンピュータ・ロボット……。間違っても一般的なラブソングはない。
「女の子向け」はガーリーなどと呼ばれるのに「男の子向け」は特に呼び方がないところが不思議ではあるけど、そういったメタリックだったりメカニックだったりするものを対象とするのが彼らの特徴だ。こういった世界観の継承者にかつてのテクノポップ系ミュージシャンの一部や、砂原良徳とかテイ・トウワといった人たちがいる。
でも、最新アルバムの「ツール・ド・フランス」なんかを聴くと顕著なのは、彼らがテーマとすることはそういう表面的なこと以上に、「人間を拡張」するモノやシステムについて歌っているということだ。
電車・高速道路・自転車などは「移動」、コンピュータ・電卓などは「情報処理」、原発は(その是非はともかく)人間の力を越えた「エネルギー」、そして極めつけなのが身体を拡張するロボットなんだけど、どれも拡大する身体・精神をテーマとしていると思う。
クラフトワークが画期的だったのは、彼らが機械のビートを気持ちいいと確信したことだと思うんだけど、そもそもそれが人間の身体からは出てこない、拡張されたリズムなのだ。
それゆえ、クラフトワークのボーカルは地声ではダメなのだ。ボコーダーを通したり、エフェクティブな処理を施していないと彼らの歌う「拡張」は表現できないからだ。
そして、今回のライブで僕も含めみんなで合唱した「電卓」の歌詞。
ボクハオンガクカ デンタクカタテニ
コノボタン オセバ オンガク カナデル
タシタリ ヒイタリ ソウサシテ サッキョクスル
これはまさにステージ上でSONYのVAIO(SONY側からアプローチしたらしい。これは「抑えてる」なぁ、SONY)を操作している彼らの4人のことだと思ってハッとした。そしてグッときてパッと目覚めたことはいうまでもない。
(2004/03/14)
