聴いてみなけりゃわからない
「TOTO/IV(聖なる剣)」

  1. Rosanna
  2. Make Believe
  3. I Won't Hold You Back
  4. Good For You
  5. It's A Feeling
  6. Afraid Of Love
  7. Lovers In The Night
  8. We Made It
  9. Waiting For Your Love
  10. Africa
何事も出会いだなぁ、と思わせられるのが、TOTOのこのアルバム。
今から10年ぐらい前の学生時代は、TOTOなんて自分には一生関係がないバンドだと思っていた。その当時の自分の中では電子音楽がホットで、ロックは聴いてもイギリスのニュー・ウェーブ系〜XTCなど英国音楽がせいぜいで、米国の音楽などはほとんど聴いていなかったと思う。

だけど、それこそ現金なもので、安いレコードがあるととりあえず名前を知っていれば買う、みたいなこともしていて、高田馬場レコファンの100円アナログ盤コーナーにあったこのレコードを手に入れたのだった。TOTOはジャケットがファンタスティックで、普通のロックよりもまだ興味はそそられたんだと思う。
ジャケットの観点でいうとYES、エイジア、ELPなどのプログレと、ジャーニー、ボストンといった80年代産業ロックやELO、そしてEW&Fなんかは「大げさな感じ」が共通していると思う。どれも一度は耳にしたことがあるのは、そのジャケットに対して「ここにはないどこか」へ連れていってくれるんでは、という期待があったからなんだけど、残念ながらどれもあまりそういう音楽ではなかった(前述のいくつかのバンドは別のアプローチで好きになったけど)

TOTOもその時に聴いてみたものの、なんだか刺激のない内容だなぁ、と思ってずっと棚に眠ったままになっていた。

それを掘り起こすきっかけが、実は前回取り上げたDIGABLE PLANETSなのだった。
「DIGABLE PLANETSのツアーの前座を務めていたこともある」とレコード評に書かれていたSYLK130ことKING BRITTのアナログ盤「THE REASON」をジャケ買いしたんだけど、内容もいかしていて、アルバム「WHEN THE FUNK HITS THE FAN」のCDも購入。
HIP HOP寄りのアーティストなのでサンプリングも多いわけだけど、ふと「THE REASON」のクレジットを見ると「Boz Scaggs」とある。当然頭の中には、なぜAORなる唾棄すべきジャンル(と当時は思っていた)の代表選手である「Boz Scaggs」の名前がこのアルバムに?という疑問符が浮かぶわけで、でもこの「Lowdown」をサンプリングしたリズムはグルーヴィーで文句のつけようがない。

となれば「Boz Scaggs」を聴いてみるしかない、と「Lowdown」が収録された「Silk Degrees」を購入。
これがかっこいい!歌はそれほど好きではなかったけど、えっ、と思うぐらいにアレンジと演奏のセンスがいいのだ。
ライナーを読むと、このアルバムのセッションで集められたメンバーを中心にTOTOが結成されたという。

ここでようやく、ずっと棚に眠っていた「聖なる剣」を引っぱりだすことになる。
その頃までにきっと耳が熟していたんだろう、当然気に入った。
改めてメンバーを見ると、マーティ・ペイチ(「サバービア」で紹介されたそのジャジーで洒落たオリジナルアルバムは素敵だったし、あのロジャー・ニコルスの名盤のアレンジも手がけている)の息子デビッド・ペイチや、このアルバムではないけど「スター・ウォーズ」の音楽を手がけたジョン・ウィリアムズの息子ジョセフ・ウィリアムズがボーカルだった時期もあり、要は西海岸音楽の正統な後継者たちかぁ!という感慨を持った。
ドラムはジェフ・ポーカロ。彼のドラムの評価は全然別のところで聞いてはいたけど、それが自分の耳でも確認できた。多くの人がTOTOは彼のドラムがあってこそ、というのもKING BRITTがサンプリングしたのもうなづける(残念ながら急逝してしまうのだが)

そういったデータ的なことはともかくとして、このアルバムはTOTOファンの間でも評価が別れるようで、AORのガイドブックでは1st「宇宙の騎士」の方が紹介されることもしばしば。確かに「宇宙の騎士」は僕も好きで、先日これら2枚の紙ジャケットリマスター盤を買った。
それでも「ROSANNA」「AFRICA」の2大ヒット曲はベタとはいえ、やっぱりいい。これら2曲が突出し過ぎているのと、他の曲がやや平凡な出来のせいでアルバムとしてのまとまりはないといわれるのも仕方がない気もするけど、「ROSANNA」が一曲目で「AFRICA」が最後の曲、というのはこれらの曲を輝かせる結果となっていると思う。個人的には2曲目の「Make Believe」もかなり好きだが。

AORとかこの手のロック・バンドというのは「ロッキンオン」的な大衆音楽史観が体勢を占める日本の音楽評論業界では過小評価されてしまいがちだけど、やはり音楽というものは自分の耳で確認すべきだなぁ、とかつての自分の偏見を恥じるのだった。

(2005/3/20)