サンプリング×2、ヤッホー×2
「DEEE-LITE/World Clique」

  1. Deee-Lite Theme
  2. Good Beat
  3. Power of Love
  4. Try Me On...I'm Very You
  5. Smile On
  6. What Is Love?
  7. World Clique
  8. E.S.P.
  9. Groove Is in the Heart
  10. Who Was That?
  11. Deep Ending
  12. Build the Bridge
いまさらな盤ではあるが、インターネット上にはインターネットが普及する以前のレコードに対するレビューは少ないようだから、そういった意味でもあえてこの作品を取り上げる意味はあるのではないか。

とはいっても実は僕がこのアルバムをしょっちゅう聴くようになったのはごくごく最近のこと。確かマドンナの新譜「Confessions On A Dance Floor」を期待していたのに、先行シングルを聴いたら想像していた音と違っていてガッカリした、という消化不良をなんか別の音楽で解消したいと棚から引っ張り出してきたのがきっかけだと思う。

リリースされた当時僕は高校生で、このユニットに関しては「メンバーにYMOチルドレンであるアジア人がいる(=テイ・トウワ)」というファクター以外はなんだか水商売的な匂いがするサウンドと勝手に思い込んでとくに興味はなかった。
リアルタイムで聴いたのは大学生の頃の2nd「Infinity Within」で、けっこう回数は聴いたけどちょっと暗い感じがなんとなくCDトレイから疎遠にさせた。
テイ・トウワの事実上の脱退後にリリースされた3rd「Dewdrops in the Garden」は義理で買っただけで聴いたのは数回だったと思う。

この1stのCDを手に入れたのは確か19歳ぐらいの頃だから、リリースから3、4年経っていた頃だったはず。中古で800円ぐらいだったからまぁ買っておくかという感じで、それでも人からはそんなにお買い得な値段じゃないと指摘されてそうかぁ、と思った記憶がある。それぐらい値崩れはしていた。

そんなCDだけど、今聴いたらホントにかっこよくてビックリした。
DEEE-LITEってジャンル的にハウスなのか・ヒップホップなのか・テクノなのかなんだかよく分からないところがあるけど、実際に聴いてみてもホントによく分からない。純粋なハウスにしてはビートがしつこくないし(逆にいうとトランス感が薄い)、ヒップホップだとしてもラップがない。テクノにしては音の遊びが少ない。P-FUNKのメンツも連れてきてファンクな感じまであったりする。

だけど、今聴くとそれが彼らの本質なんだということがはっきりと分かる。そしてそれは実はこれがリリースされた時代の本質的な部分でもあるんだと思う。

最近インターネット上で読める本やレコード、映画などなどのレビューを読んでいてよく思うことが「いったいこれを書いている人は何年生まれの人なんだろうか?」ということだったりする。
「何歳だろう?」という疑問とは微妙に違う。単純に年齢のことを考えるのではなくて、たとえば僕が知っている「あの時代の空気」をこの人は何歳ぐらいに吸ったのか、それともそもそも知らないのか……。

このアルバムに関していうと、「サンプリング」という手法に衝撃を受けた人々の「万能感」からくる伸びやかさが生む独特の“有頂天”な感じ、というのがとてもよく出ていると思う。
ちょうど時代がバブルの頃だったせいか、その“有頂天”な感じというのは今ではやたらと猛省を促されるものとして扱われ過ぎている気もするけど、こうして音としてパッケージされているとやっぱりこれもこれでいいんじゃない?と思ってしまう。



さて、その「サンプリング」についての話題はやっぱり避けて通れない。
「サンプリング」は「著作権」「パクリ」「引用」といった行為と隣接して、ネット上の話題の一つになることが多いと思う。常々これに関して話すときには問題を整理するべきだと思ってはいたけど、いわゆる「引用行為」には次の段階があると思う。


とりあえずこんなところだろうか。
最初に強く申し上げておくけど、僕は著作権の問題というのは、被害者と容疑者間の問題であってそれ以外の人がとやかくいうことではないと考えている。

それよりももっと興味があることがあるのだ。
それは、こういうことを話題にする人が上の分け方に納得した場合、どこからどこまでがOKで、どこからどこまでがNGと考えるのだろうか?という問題。
まずはこれを明らかにしないと議論が平行線をたどることが多いと思う。
また、問題点を商業的な部分におくのか・感情的な問題におくのか、でもまた違うと思う。

僕の場合は、できあがったものがオリジナルと違った面白い部分がある「盗作」までがOK。
よく言われることだけど、引用している場合はそことそれ以外の「+α」が生み出す化学反応のようなものを楽しみたい。

そもそも盗作されてもそれがオリジナルよりも素晴らしくないものであれば人はオリジナルを求める。その逆もまた真。
ただもちろん、それを最初に考えたオリジネーターは特許よろしくおいしい思いをするべきなので、無断でやられた場合はどんどん訴えればいいと思う。
でも逆に誰かが引用したりすることで、オリジナルが再評価されることだって多くあることは忘れてほしくない。

結局は、引用されたことでされた人が損をするのか・得をするのかが問題であって、決して「引用行為自体を悪」とは思いたくないのだ、僕は。
それとも絶対的に人が既に作ったものは神聖で、他の人がそれを使って新しいモノを作ってはいけないと考えていたりもするんだろうか?もしそうなら、それが僕とあなたとの考え方を分ける太いラインがそこにはある。

そういう人にとって、このDEEE-LITEの1stアルバムはどう聞こえるんだろうか?
実際僕はこのアルバムのどれぐらいの部分が引用でできているかは分からない。でもたとえば「Groove is in the Heart」のサンプリング元として一躍脚光を浴びたハービー・ハンコックの「Bring Down The Birds」が入った「欲望」のサントラは買ったし、YMO音源からのサンプリングもYMOファンとしても唸るものがある。

もちろん、こういう音楽の楽しみ方を押しつけるつもりはないし、この手の方法の在り方を否定する人の気持ちも分からなくはないけど、なにかもったいない気がするんだよなぁ。

(2006/2/18)