90年代日本語特集
90年代に僕が比較的歌詞が気に入って聴いていた音楽の特集。
以前戸田誠司
(ex.フェアチャイルド)とムーンライダーズの鈴木慶一が対談してたんですが、そこで、「人によって歌詞の聴き方が二通りある」という話題があがっていて、一つは「最初から最後まで一つの流れ・物語として聴ける人」・もう一つは「フレーズ単位でしか聴けない人」という分類をしてました。
ちなみに僕は後者で、ほとんどの曲を聞き終わった後に歌詞が何を意味していたかが分からない。ゆえに「好きな歌詞の曲」=「好きなフレーズを含んだ曲」をいえます。
まぁ、基本的にインストが好きなリスナーなので歌詞は重視してません。だって、歌詞を重視するミュージシャンって作家になっちゃったりするじゃないですか。あれはあれでいいと思うんですが、「やっぱ音楽でなくてもよかったんだ」というムナシサをどうしても感じてしまう。
ところで、飽きっぽい僕なのでここで紹介してるアーティストのCDは、取り上げたアルバム以外は持ってないことが多いです。他の聴くなら同じの聴いてた方がいいや。この気分って他の「リミックス仕事でもいいから全部聴きたい」欲求と正反対。この辺りに僕の日本語歌詞への態度が表れてるのかもしれません。
(2000/07/16)
佐野元春

「moto singles 1980-1989」
えっ、EXPOPのやつサノモトハルなんて聴くの〜?意外!という声が聞こえてきそうですが、聴きます
(笑)。スタカン経由の「cafe Bohemia」がきっかけ。
前回の「80年代ソニー系アーティスト」の親玉的存在だと思いますが、僕が中学生の頃
(「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」あたり)は反・原発とかうるさ型のメッセージミュージッシャンなのかと聴かず嫌いしてました。しかもその当時は「尾崎豊」と同フォルダに入れてました、全然違うんだけど。あ、そうそう尾崎豊に関しては僕の中では「評価対象外」ということでよろしくお願いします
(評価が低い訳じゃないですよ)。まぁ、でもナルシズムのために人様のモノを盗んだり
(バイク)、壊したり
(校舎のガラス)してはいけませんよね。
閑話休題。
佐野元春の歌詞というのはハッキリ言って悪文だし、歌詞カードだけ読んでも何が言いたいかよく分かりません。でもそれが彼のとても上手とは言えない歌声にのったときに生きてくるんだと思う。歌詞の特徴としては、「物語」はなく都市の情景を俯瞰的にカット&コラージュ、そこにカタカナを含んだメッセージフレーズを混ぜるという感じ。
それがソニー系を中心に多数のフォロワーを生んでしまったところは彼の功罪といえるでしょう。彼の詩作の呪縛が解けるのは90年代初頭のドリカムの台頭まで待たなくてはならなかったのです。
かせきさいだぁ

「かせきさいだぁ」
佐野元春「Happy Man」の「アスピリン片手のジェットマシーン」というフレーズを引用した叙情派ラッパー。
彼は今や「風待茶房
(松本隆)の丁稚奉公」てな感もあるぐらい松本隆との交流が盛んですが、松本詞の引用・はっぴいえんどをサンプリングしたバックトラック・ニューウェーブ&ネオアコからの影響などなど最初聴いたときは驚きでした。とはいえいわゆる「はっぴいえんど」風の「ですます調」はそんなになくて「〜さ・〜なのさ」というフレーズが多いですね。
しかし、ラップ下手ですね
(笑)。この朴訥とした感じがまた詞にとても合っているんですが。使い古された言葉で言うと「ヘタウマ」。バックトラック陣にはとてもめぐまれているのですが、このCDは音が悪すぎる。
元ナムコでバイトをしてたとかでナムコにいる僕の先輩が一緒に仕事したことあるとか。
スチャダラパー

「WILD FANCY ALLIANCE」

「スチャダラ外伝」
日本語ラップ、といえば彼らを抜きには語れないでしょう。今やドラゴン・アッシュの影響で「J-B-BOY
(笑)」が日本語ラップの王道みたいになってしまってかなりうんざりしてるんですが。みんな無精ヒゲはやして金のネックレス、マイクの持ち方も何もかもステレオタイプ。んで、「オレは昔はワルだった〜、でも今は親にリスペクト〜」って何だよ、それ。もう、スチャダラが頑張ってきたのは何だったんだろう??80年代におけるファッションパンクのような役割を担っている音楽、という感じもします。
おっとっと、ああいう人を敵に回すと恐いのでこれぐらいにしといて
(弱気)、スチャダラパー。この2作は僕の中では聴くのが恐ろしいぐらいすごい歌詞世界が展開されているのですが、一番凄いところは歌詞カードなしでも聞き取れるところ。それどころかボーズとアニの掛け合いは漫才
(「浅草キッド」か?)にも通ずるスゴミがあります。笑えるんだけど、考えさせられるあたりはユニット名の由来であるコント「スチャダラ」
(のちに彼らがリメイク)の作者・宮沢章夫のエッセイに似てますね。
前者収録の「Little bird strut」、後者収録の「GET UP AND DANCE」
(ポンキッキーズのオープニングナンバーでしたね)では仲間の「L.B.NATION
(リトルバードネイション)」勢揃い
(かせきさいだぁも前身の「トンペイズ」の一人として参加)ですが、皮肉にもスチャダラの二人のラップのうまさが際だつ結果となっています。違う意味でうまいのは「脱線トリオ」ですかね。
しかし、ここまで「ハナシ」というか「ベシャリ」のリズムを音楽に取り入れてるのはすごい。あんな会話を日常的にしてたらもう雑談なんてしたくなくなりますよ、ホント。
前者のラスト「彼方からの手紙」、後者のオープニング「トラベル・チャンス」の前半部分のやわらかい切なさはもう聴いて下さい、という他ないです。まさに「B-BOYブンガク」
(←彼らの曲のタイトル)の名がふさわしい。
ウルフルズ

「バンザイ」
「しゃべりのリズム」といえばこのグループ。「大阪ストラット」のリズムは、ドラムンベース、レゲエと同格として「大阪弁」というリズムと言えるはず。
中国旅行したときに京劇をはじめとした演芸のセットを見物したのですが、その中に手にした竹製のカスタネットのようなものをリズミカルに鳴らしながらしゃべるオッサンが出てきた。僕は中国語がまったく分からなかったのだけど、その「音楽」とはいえなくても「うた」に限りなく近い「しゃべり」の面白さは伝わってきた。
このアルバムもトータス松本の「しゃべり」の魅力がそのまま詰まった内容。「てんてこまい my mind」「ダメなものはダメ」あたりはほぼコントかも。
米米クラブなどお笑い要素を含んだバンドがバラード系であててその路線のワンパターンになり解散、という流れがある。けど、現在のウルフルズを見ていると美談を含んだ「バンザイ」路線で責めずに頑張っているようでCDを買ったりはしないけどガンバってほしいと思う。
THE BOOM

「思春期」
僕がもっともくだらないと思ってるのがラブソングの歌詞で、基本的にウンザリします
(ただし、「歌謡曲」と割りきって聴く分にはむしろ楽しんでるぐらいなんですが)。その点「THE BOOM」はあまり男女の恋愛模様なんかは歌わず、「それだけでうれしい」。じゃあ、何を歌っているかというと難しいですね。初期は皮肉っぽいブラックユーモアたっぷりの曲が多かったのですが、このアルバムに収められた「島唄」以降はスケールの大きな
(っていうのも常套句の割によく分からないんだけど)歌詞が多くなっていったような気がします。僕は「島唄」以降は「風になりたい」「手紙」以外はあまり好きではないです。
このアルバムはちょうどその転換期にあたるため、「ひのもとのうた」「みちづれ」のようにブラックな曲もあれば、「子供らに花束を」のようなメッセージソング、「そばにいたい」のような叙情的な曲などバラエティに富んでいて一番バランスがいいように思えます。
歌詞自体でいうと英語のフレーズが皆無というのも好感が持てます。結構歌詞だけ読むとストレートなことを言ってたりするんだけどボーカル宮沢和史が歌うと不思議と魅力的に聞こえる。
THE BOOMの「青さ」と昨今はやりのフォークっぽい歌謡曲の「青さ」とは何が違うんだろうと考えたときに、後者に「高校生の放課後」的なノリがあることでは?と思ったけど、後者をあんまり真面目に聴いたことがないのでこれ以上書くのはやめにします。
サニーディサービス

「東京」
むちゃくちゃフォークっぽい、っていうかまんま「はっぴぃえんど」なサニーディ
(現在は知りませんが)。裏ジャケを見るととても90年代に出たCDとは思えません。そういう部分がちょい鼻につく部分があったりするんだけど。
口調は「〜なんだ」「〜するんだ」が多い。あと、唄われてる情景がよく言えば叙情的、悪く言えば貧乏くさい。壁にアース製薬とかボンカレーの鉄製の看板がかかっている感じの古さ。
貧乏だけど
(だから?)ガールフレンドはいて一緒に歩いてはいるんだけど、女性にブツブツと話しかけるような・ちょっと内向きな歌詞が多いのも特徴のような。しかし、歌詞に出てくる女性はちょっと無口すぎる印象があります。手足が長くて線が細くてウフフと微笑むような、絶滅種。
ってなんだかあんまり好きじゃないみたいだけど、そんなことはないです。自分の中にあるこういう情景への憧れを満たしてくれるCDとして重宝してます。この適度な黴臭さが何とも言えない、そんな不思議なCD。
スピッツ

「RECYCLE Greatest Hits of」
スピッツはけっこう昔から知っていたんだけど
(「名前をつけてやる」って何て変なタイトルだと思ってた)、好きになったのは「ロビンソン」から。草野マサムネ、ズルい。声勝ちです。「宇宙の風に乗る」って、もう!で、アルバム聴いてみると意外にロック色が強い曲が多かったりして、フォークっぽい曲は案外シングルぐらいしかなかったりする。じゃ、ベスト待ちだと思ってやっと出たのがこれ。
ちょっと聴くと普通のラブソングっぽい歌詞なんだけど、幻想的というか宇宙方面への破け具合が特徴。「宇宙」「天使」「神」「千の夜」「輪廻の果て」「タマシイ」とちょっと抜粋しても「ふつう、使わないでしょそんな言葉」というのが無理なくちりばめられている。
松本隆トリビュートライブで、子供の頃に風邪をひいた寝床で聴いてナチュラルトリップしたという原田真二「タイムマシン」を唄っていたけど、なるほどな選曲かも。
真心ブラザーズ

「B.A.D. BIGGER AND DEFFER MB’S SINGLE COLLECTION」
「どか〜んと一発」ってなぜかRC-サクセションの曲だと思ってた。これは余談ですが、明らかに影響を受けてると思う。ちょっとナイーブな男性デュオが多い中、彼らもナイーブといえばそうなんだけど「やっぱ男気は必要っスよ」
(「ス」がカタカナなところがポイント)という部分が珍しい。けど、一人称は「オレ」じゃなくて「僕」。これ重要。「女性の前でも泣ける自分が素直」という昨今の風潮に逆行して「ケッ、女の前では泣けるか」と言うものの、けっして泣かないのではなく背中で泣いてる男の美学。
歌詞は男気を差し引いてもユニークで、ビートルズファンから賛否両論
(っていうか圧倒的に否定的意見が多かったと思うのだが)だった「拝啓、ジョン・レノン」なんて、ジョン・レノンを神化してありがたがっていては絶対分からない真の魅力を唄っていて素直に感心した。ジョン・レノンをまじめに聴いてみたくなった。ビートルズファンのあなたはファン以外の人にこう思わせることができますか?
あと、ボーカルの音程の危うさがすごい。ハズしてるわけじゃないんだけど、「ミュージックフェア」とかで他人の曲を歌ったりしたら絶対キツイと思う
(絶対出ないとも思うが)。「自分の作った歌しか歌えない」というのこそ「シンガーソングライター」なんじゃないかと思うが、彼らこそそれだ。これからもどんどん「文化系男気」の世界を高めていった欲しい。
「サマーヌード」とパフィがゲストの「ループスライダー」は夏になると聴きたくなる名曲。
余談
ふ〜、あとは別コーナーで書いた高野寛を入れればもう日本語はいいです、お腹いっぱい。
今回これらのCDを紹介するにあたって歌詞カードを読んだりしたけど、つくづく歌詞が耳に入ってないと思った。言葉としては耳に残ってるんだけど、それを意味のあるものとして考えてない。「気持ちのいい音」として聴いている。ゆえに歌詞をじっくり聴くタイプの人と音楽の話をすると戸惑うこと多し。J-POP評論家って歌詞だけを評価する人が多いんだけど
(その点、近田春夫はサウンドと絡めた歌詞の魅力について書いてたりしてズバ抜けてると思う)そういう人達の評価も戸惑う。

「フィッシュマンズ空中キャンプ」

「フィッシュマンズ/宇宙 日本 世田谷」
例えばフィッシュマンズ。嫌いじゃないけど、僕はこれならリトル・テンポ
(インスト)の方が好きだ。だって歌詞聴かないもん。ボーカルが片方の足を天国につっこんでるかのような部分も、正直恐い
(実際天国に召されましたが)。その恐さが魅力といわれちゃうと「そうですか」としか言いようがないんだけど。でもちょっと誉め過ぎじゃないかな?
あと、中村一義はピンと来ないっていうか歌が下手すぎる。何だかんだいって最近は歌がマズいのは許せなくなってきた。料理だとお米が不味いようなものですからね。
まぁ評論家の方々には歌詞だけじゃない部分も評価してねと言いたい。分かりやすいんだけどね。
最後に中村一義で思い出したことを一つ。
彼がレコード会社との契約を切られたことに関して、ある女性評論家
(単なるライターか?誰か分かんないけど)が「彼のような才能を多くの人に知らせようとしないのはレコード会社の怠慢だ」みたいなことを書いていた。
おいおい、ちょっと待て。あなたが心底評価したアーティストなら、あなた自身がみんなにその才能を知らせるべきでしょ。それは評論家の怠慢。あんたが雑誌の隅のレビューで絶賛してても世の中は変わらないって自分で言ってるようなものじゃないか。試聴ができるようになるとどんどん雑誌レビューはいらなくなりますよ。あなたの感想よりも聴いちゃった方が早いんだもん。
……と腹が立ちました。あ〜すっきり。