種ともこ

一夜限りの再結成(?)、久々のプカドン交響楽団の演奏です。

今回はシンガーソングライターの種ともこを取り上げたい。今やマイナーなアーティストのようなので簡単に説明すると、矢野顕子に影響を受けて音楽をはじめたタイプで、音的には同時代的でいうとPSY・Sとかが似ていると言えば似てるかな(実際松浦雅也がサウンド面で参加してるし)

僕は今でもファーストから5枚目あたりまではよく聴く。こういうタイプの楽曲を作る人は今はあまりいない、と思う。
残念ながら彼女のアルバムは廃盤になっていて手に入りにくいんだけど、少しでも興味を持ってくれる人が増えて再販されることを願う。
公式サイト「WEEDY MOODY」。

「いっしょに、ね。」CBS/SONY 32DH-353 86.3.21
「いっしょに、ね。」CBS/SONY 32DH-353 86.3.21

  1. You're The One
  2. Fish Dancin'
  3. あの頃の想い (Lovin' You)
  4. ただそれだけ
  5. いつか王子様が
  6. 僕が Hero(になれたらいいな)
  7. 嘘つき少年
  8. Actor Mr. Santaclaus
  9. 不思議な樹
  10. 10円でゴメンね
このバカジャケはなかなか越えるものがないんじゃないか。デビューアルバムにも関わらずこれを押し通した種ともこの頑固さはただもんじゃない、と思う。
時代と予算のせいか全体的に音がペラペラしていて、デモテープっぽいがそれがまた味。「少年」というより「男の子」的な視点で描くファンタジックな、それでいて科学的というより「理科」っぽい味つけはこのころからの特徴。
名曲「You're The One」「10円でゴメンね」はもちろん、カリプソ調のハッピー躁状態の「ただそれだけ」など聞き所多し。

「みんな愛のせいね。」CBS/SONY 32DH-537 86.11.21
「みんな愛のせいね。」CBS/SONY 32DH-537 86.11.21

  1. AIAI
  2. 射とめたいShyna-Heart
  3. げんきよ
  4. チャンスをちょうだい
  5. It Must Be Love
  6. 片恋同盟
  7. おやすみ Tinker Bell
  8. 下駄箱の怪事件
  9. お茶の間で Dance
  10. 気がついてよ My Boy
  11. あいのうた
このアルバムは、ちょっと暗くて実は好きじゃない(特に後半)。タイトル通り恋愛に関する歌が多くて、1stでのファンタジー的な部分は少なくなっている。そんな中で表題曲ともいえる「It Must Be Love」の「ごはんをたべるのも 眠るのも お風呂にはいるのも みんな愛のせいね」という歌詞はすごいと思った。
個人的には「チャンスをちょうだい」が好き。

「Che Che - Bye Bye」CBS/SONY 32DH-800 87.10.1
「Che Che - Bye Bye」CBS/SONY 32DH-800 87.10.1

  1. サヨナラ Play Boy
  2. 年下の Steady Boy
  3. 悲しき球技大会
  4. いついつまでも
  5. 瞳のなかの少年
  6. 夏・ハレーション
  7. タイムドライバーは仮免
  8. 相合傘の香港
  9. ねぼけて China Town
  10. BARCELONA
  11. 謝々 Bye Bye
これまでの種ともこの歌にはあまり「舞台」というものが設定されてないようなものが多かったように思うが、このアルバムの曲はタイトルの中国語からも分かるようにその辺がはっきりしている。「悲しき球技大会」など場所だけじゃなくて状況設定も具体的かもしれない。
やっぱり「年下のSteady Boy」「タイムドライバーは仮免」など躁状態の曲が好きだけど、このアルバムでは「瞳のなかの少年」「BARCELONA」など、暗いわけじゃないけどちょっとスケールの大きめな曲が多くなってきた気がする。

「ベクトルのかなたで待ってて」CBS/SONY 32DH-5032 88.4.29
「ベクトルのかなたで待ってて」CBS/SONY 32DH-5032 88.4.29

  1. Pumps Race Song
  2. 10円でゴメンね
  3. Fat Ma Is Cleanin' The Room
  4. ラビリンス―迷路―
  5. キュウリ de Vacation
  6. 遅咲きスキャンダル
  7. 買ってちょうだい
  8. Mermaid In Blue
  9. ないしょ Love Call #2
  10. Good Night
一番最初に聴いた作品で一応彼女の(たぶん)唯一のベストアルバム。種ともこを知ったのはたまたま耳にした「NHKみんなのうた」の「Fat Ma Is Cleanin' The Room」「買ってちょうだい」の2曲が好きで、そのタイミングでこのアルバムが出たのがきっかけ。まずタイトルの「ベクトルのかなたで待ってて」というのがすごい。これこそまさに種ともこの世界。
「Pumps Race Song」「遅咲きスキャンダル」などちょっと歌詞世界の年齢層があがった感じもするが、「買ってちょうだい」「キュウリ de Vacation」など得意の子供世界も健在。
「10円でゴメンね」「ないしょ Love Call #2」(これは僕の中ではベストソング)などポップな楽曲は健在だけど、その中に前アルバムからのスケール大きめ路線の「ラビリンス―迷路―」「Mermaid In Blue」「Good Night」といった曲がいい具合に配置されていて、まとまりがいい。今でもこのアルバムが一番好きだ。
当時はこのアルバムに出てくるような女の子のような、ファニーなガールフレンドがほしいものだ、とも思っていた。

「O・HA・YO」CBS/SONY 32DH-5199 89.3.1
「O・HA・YO」CBS/SONY 32DH-5199 89.3.1

  1. The Morning Dew
  2. オ・ハ・ヨ
  3. ゲンキ力爆弾
  4. 時間延長のシンデレラ
  5. Triangle On The Pavement
  6. Had Enough
  7. Initialise
  8. 光合成・アフリカ
  9. 謹賀新年
  10. 戦争気分で Picnic
  11. KI・REI
「ベクトルのかなたで待ってて」の延長線上に、よりアルバムとしての完成度を高めた作品。楽曲の陰陽のバランスも全作と似ている。このアルバム以降は発売日に買って聴いていた。
ちなみに「Initialise」はいわゆるイニシャライズ=初期化という意味で、自分の彼氏が自分の前につきあっていた男の子とを気にしてばかりいるので、そういうのは初期化して「アナタ語で」新しい恋をはじめましょう、という内容。パソコンをほとんど触ったことがなかった当時は分かるはずもなかったけど、かなりユニークな歌詞だと思う。
前作よりもまた年齢層があがり、ちょっと違うけど朝帰りの曲まである(「時間延長のシンデレラ」)
「光合成・アフリカ」「KI・REI」といった大きめスケールの曲もかなり完成度が高く、特に前者はこの路線の完成系だと思う。
ジャケの印象もあるかもしれないけど、全体的に「」を感じる曲が多い気がする。
やはりタイトル通り元気な「ゲンキ力爆弾」がベスト。オニギリは愛の手りゅう弾、というメタファーが素晴らしい「戦争気分でPicnic」もいい。

「うれしいひとこと」CBS/SONY 32DH-800 90.2.10
「うれしいひとこと」CBS/SONY 32DH-800 90.2.10

  1. 笑顔で愛してる
  2. 日曜日はパジャマのままで
  3. 好きだと言わせない
  4. 雲に映る歌
  5. 屋上へゆこうよ
  6. 二度と森へは誘わないで
  7. ゼイタクに Kiss+Tears
  8. 安売り水着を結局買ったアタシの歌
  9. ダイエット・ゴーゴー
  10. うれしいひとこと
このアルバムから明らかに路線が変わった。今までファニーでファンタジィな面が強かった種ともこだが、「非モテ系文系女子」というキャラを演じるようになったと言えばいいのだろうか(「安売り水着を結局買ったアタシの歌」「・ダイエット・ゴーゴー」)。少なくとも歌世界の年齢層はかなりあがった。なにせ「日曜日はパジャマのままで」などは結婚生活を歌っているのだから、前作まで必ずあった子供の、しかも男の子の歌なんて居場所があるわけがない。
音作りの面では、アコースティックな色合いが強くなった印象がある。というより、音作りが多様になったとも言うべきか。
ファンのネットでの感想を呼んでいると、これ以後の種ともこが好きな人が多いようで、あまり初期の作品は取り上げられてなかった。実はそれが今回特集した大きな理由なのだが……。

「音楽」CBS/SONY CSDL-1099 90.11.21
「音楽」CBS/SONY CSDL-1099 90.11.21

  1. 1・2・3・4!
  2. Overture〜199Xの風景
  3. きみとあるいてく
  4. Tomoko Goes To Studio
  5. お金持ちになりたい
  6. X'mas
  7. Wings Of Angels
  8. 水の中の惑星
  9. さあ 自己紹介
  10. O.S.O.S
  11. Why So Beautiful
  12. The Rainbow Song
  13. 恋の一年ボーズ
  14. 48tracks ぶんの I Love You
これが出た高校生の頃には、狭かった音楽の趣味も多少広がり、彼女の作品からも離れつつあったんだけど、とりあえずリトマス紙的に買ってみようと購入。が、これが僕が最後に買った彼女のアルバムとなった。

「音楽」というタイトルからも分かるけど、やたらとボリュームがあって聴き疲れする。この時代はバンドブームで、宅録&弾き語り派の種ともこにとってはやりにくい時代だったんじゃないだろうか。サウンド面でもディストーションギターやジャパニーズロック的なベタッとしたドラム(レベッカの小田原豊なんだけど)が耳につき、それは彼女の歌世界とはマッチしないというか、その世界から引きずり出そうという逆効果を生んでしまって、邪魔に感じる。初期の頃のピアノと鼻歌で曲を作ってる感じがすごく好きだったんだけど、ここでは無理してバンドとのセッションからサウンドを作り出したかの印象がある。けれど彼女は自身の筋肉から音が生まれるタイプではないので、それがいい結果を生まなかったんではないかと思う。

ちなみに同時期にPSY・Sも宅録系だった傑作「アトラス」の後、バンドサウンドを取り入れた「シグナル」というアルバムを出して、僕はこれも好きじゃなかった。バンドブームってそのブームの中心ばかりが注目されるけど、こういった当時のJ-POP周辺にもいろいろと影響を与えていたのだと、今になって思う。種ともことかPSY・Sって80年代のニューウェーブ的な部分があると思うんだけど、それがこの時期(1990年)に一度リセットされてしまったのではないだろうか。そして、それが違う形で生まれ変わったのが「渋谷系」だった気もする(しかし、この時期は本当にテクノ的な音が少なくて哀しかった。ハウスは無視してたので、その後5年は待った気がする)


また歌詞に関しては、前作までどちらかというと曲ごとに分かれていた「ユーモア」と「叙情性」が渾然一体となっている。そこがこのアルバムを傑作とするか凡作とするかの分かれ道じゃないかと思う。僕は、これ以後の彼女の歌世界には興味がなくなったと書いたようにこの作品は好きじゃない。彼女のキュートでタイニーでポップでユニークな面が感じられないからだ。
これは推測でしかないんだけど、確かこのころ彼女は結婚直前だったはずで、もう子供の視点で歌うこともつらくなってきたんじゃないだろうか。恋愛よりももっとグローバルな「愛」をテーマにしていて、それが逆に彼女のユニークさを薄めていると思う。まじめすぎるというか。
だからこそ、これ以降の作品は女性ウケするんだと思うんだけど。

最後にオマケでこれ以外で所有している作品を紹介。
「10円でゴメンね」12inchシングル
「10円でゴメンね」12inchシングル
ジャケが好きだったので、蒲田「えとせとら」で購入。本人も含めかわいい。

「ブルーライトヨコハマ」
「ブルーライトヨコハマ」
小西康陽が彼女のプロデュースを手がけたりしたこともあったようだけど、このシングルはそのときの作品。筒美京平の代表曲の一つ。
ナレーションを野宮真紀が担当してたり、とピチカートのアイテムの一つとして購入。種ともこはシンガーに徹しているので、それほど面白みはない。

(2002/08/25)