ポップ・コラージュ

今回はコラージュ・ミュージック、それもポップなものに限って紹介します。
コラージュものというと、レコード屋の現代音楽や実験音楽のコーナーにおかれた難解なノイズ系のサウンド……というイメージを持っている人もいるかもしれませんけど、決して間違いではないかも。
でも中には、いわゆる「雑貨屋」系・「おもちゃ箱ひっくり返し」系のコラージュ音楽もあるわけで、それをここでは勝手に「ポップ・コラージュ」と呼んでまとめてみました。レコード棚的にいうと「ラウンジ」系のコラージュ・ミュージックですね。

そういや隣駅に輸入食品店があって、そこにはアメリカ・ヨーロッパ・アジアのお菓子・飲み物・調味料・お酒などなどがゴチャマゼに売られているんだけど、食べ物にあまり興味がない僕でさえも見てるだけでホントに楽しくなる。コンビニなんかと違ってパッケージのデザインに共通するトーンがないんだけど、同じ棚に陳列されることで独特の色合いが出るのが面白い。
これから紹介するCDはどれもそんな魅力に満ちている。
といっても特にこのジャンルに精通してるわけではないので、マニアの方はご勘弁!

最初から入手困難なCDで申し訳ないけど、この手のカットアップCDってのは著作権もビミョウなものが多いのとあまり売れないのとで、見つけたら買わないと手に入らないことが多い。その極端な例としてご紹介(いえ、ほとんど自慢です)
「YOSHINORI SUNAHARA AND HIBIKI TOKIWA/TRANSONIC NOT FOR SALE」
「YOSHINORI SUNAHARA AND HIBIKI TOKIWA/TRANSONIC NOT FOR SALE」
これは砂原良徳と常盤響が、テクノ〜音響レーベル「TRANSONIC」のリニューアルを記念して作った、編集狂的カットアップCD。ゲリラ的に発売されたとも聞きますが、ジャケにも書いてあるとおり基本的には「NOT FOR SALE」。
僕はある方にダビングしていただいて気に入ってたんですが、レコファンにて7000円のプレミア価格で売られていたのを目にして、ライク・ア・フォーリング・キヨミズテンプルでゲット。今まで買った中で一枚の単価が一番高いCDですが、値段分の価値はあったと思ってます。実際よく聴きますし。
とにかく様々なポップ・ミュージックとボイスをカットアップしまくってあり、最初はかなり面食らうんだけど、慣れてくると病みつきに。
ちなみにこのCDが、砂原良徳ソロの「TOKYO UNDERGROUND AIRPORT」の布石になったそうな。
「mars art lab./wedding album」
「mars art lab./wedding album」
こちらは常盤響が自分の結婚式の引き出物に作ったというカットアップCD。当然非売品で、僕は現物を持っておらず人からダビングしていただいたんですが、テイストはほぼ「NOT FOR SALE」と同じです。
ピチカート・ファイヴが'94ワールドツアーの際に演奏前に流していたらしく、小西康陽「これは恋ではない」P296には

演奏の直前に流していたのは、トーキョーから持ってきていた、例の常盤響君のウェディングCDだったが、それさえも「あらゆる音楽のジャンルをテレヴィのごとくザッピングしていて、彼らの音楽スタイルそのもの」なんてホメ殺しされていた

と書かれている。まさにそんな内容。

↑yahooオークションで現物を安価にて入手。存在は知っていた「MARS ART LAB./DISSECTION KIT」というアナログレコードサイズのジャケットの中に、数ページの「ポンチ絵」ブックレットとこの「wedding album」と題されたCDが入ってました。それまで「DISSECTION KIT」というコラージュCDが別に存在するのかと思ってましたが違いました。
ジャケット裏には

PRODUCE……MARS ART LAB.
SELECTION……HIBIKI and MAYUMI
MD MIX……HIBIKI and MARS ART LAB.
CD PRESS……DO! ING
Kono CD ni syuuroku sareteiru ongen wa analog record kara rokuon sareteiru node, samazama na noise ga deru koto ga arimasu otanoshimi kudasai.
Track No. wa about desu tsudsukete okiki kudasai.


と書かれています。
改めて聴いても素晴らしいセンスのコラージュ作品。

(2004/02/22追記)

「Haircut Museum Against the Coffee」
「Haircut Museum Against the Coffee」
これまた常盤響によるもので、「NON STOP MUSIC from SOUND MUSEUM & SWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINE. 」、つまりテイ・トウワの2作品をカットアップした非売品プロモーションCDです。これも人からダビングしていただいたものを愛聴しています。

プロモ盤なので関連ショップには無料で配られたそうですが、関連CDについているオビを集めて応募しても抽選であたったそうな。うらやましい……。ちなみにCDのスリーブには、TOWA TEI氏直筆のシリアル・ナンバーが入ってたとか。
「CUT UP! TRATTORIA CUT-UP BY HIBIKI TOKIWA」
「CUT UP! TRATTORIA CUT-UP BY HIBIKI TOKIWA」
ヤフオクで安価にて手に入れました。が、正直期待が大きすぎていまひとつ。「トラットリアの音源を中心に……」というシバリがキツすぎたのか?そもそもトラットリアってけっこうレーベルとしてとっ散らかってましたしね。
ジャケはシングルCDサイズで、時間も19分ぐらい。

(2004/02/04追記)

「Roboshop Mania vs 常盤響/HIBIKI TOKIWA MADCAP-MIX」
「Roboshop Mania vs 常盤響/HIBIKI TOKIWA MADCAP-MIX」
米マシン・オブ・インスツルメント社による、変速効果におけるポップミュージックとリズム感の臨床実験曲。 常盤響
と帯に書かれています。また「300yen(tax included)」と書かれているので、非売品ではないようです。5分程度の作品。
Roboshop Maniaって名前は知っているけど、どういう音の人たちか知らないので、どこまで元音源が生かされているのか、という点がちょっと分かりません。「CUT UP! TRATTORIA」よりは面白かったです。

(2004/02/22追記)

このCDはテイ・トウワのネットレコ屋akashic records storeにて紹介されて、試聴→購入。カナダはトロントのブレイクビーツ・アーティストの作品集。コラージュ作品ではないけど、発想は近いと思う。
テイのコメントとして

楽しいブレイクビーツアルバムです。元気でます。かなりsweet robots against the machineの1st.的方向性だと思いました。

と書かれているとおり、いい意味でタイニーにまとまってるんですが、12、13曲目の長いテクノ調の曲には閉口。これと音質が悪いのとを除けば楽しめるアルバム。
最近はたいてい試聴してからCDを買うので中古レコード屋へはほとんど行かないんだけど、これも新宿タワレコ(7Fにあるいろんなテーマ別の試聴コーナーが重宝)にて試聴→気になってWポイント・キャンペーン時に購入、というパターン。
なんとロシアのユニットで、ドイツにラウンジなセンスがあることは知ってたけど、まさかロシアにまであるとは。ジャケの車・メッサーシュミットで、「君たちのことは分かった!(僕と握手!)」って感じ。
ロシアゆえにコラージュにはかかせないボイスもロシア語が多く、まるで構成主義のタイポグラフィを見てる感じで楽しめる。そう、コラージュ・ミュージックにおけるボイスってのは、音のタイポグラフィなんですよね。
おそらく買っておかないと5年後には手に入らなくなる類のCDだと思われます。
「Stock,Hausen&walkman/Organ Transplants vol.1」
「Stock,Hausen&walkman/Organ Transplants vol.1」
↑の「Messer fur Frau Muller」を買ったことで何度目かのポップ・コラージュのマイ・ブームが来てしまい、「他に何かないか?」とネットをウロウロしてて思い出したユニットがこの「Stock,Hausen&walkman」。そういえばテイ・トウワも1996年のベストの一枚に挙げてました。
確か当時、人に貸してもらって聴いたことがあったんですが、その時は「なんか気持ち悪いなぁ……」とスルー。今になって聴きたくなるとは。そして、古人曰く「聴きたくなった時に盤は無し」。
そう、「ない」!大手レコード屋はもちろん、中古レコード屋を探してもない!ない!っていうかどこのコーナーに置いてあるのか探すのだけでも一苦労。というわけでこのアルバムはまだ聴いてません。
「Stock,Hausen&walkman/Organ Transplants vol.2」
「Stock,Hausen&walkman/Organ Transplants vol.2」
なので、ほぼ同テイストらしいこの「vol.2」を手に入れました。
このシリーズはオルガンをフィーチャーした比較的聴きやすいアルバムだそうで、ジャケやタイトル含め多少悪趣味なところもありますが、それが聞き手への嫌がらせではなく茶目っ気に感じられるところが、この人たちの特徴なのではと思った。

ちなみに「Stock,Hausen&walkman」というユニット名はカイリー・ミノーグなどユーロビートで一世を風靡したサウンドチーム「Stock,Aitken&Waterman」と、現代音楽のシュトックハウゼンと、walkmanをコラージュしたものだそうで、名前からして!という感じ。

彼らの特集ページは、CD購入の際、参考になりました。
「君はこれが好きそう」と大学時代の音楽サークルの先輩に薦められた、同サークルのOBであるケン・カツマタ氏のユニット。会ったことないですけど。
これはコラージュものには珍しく、とにかく「躁」なサウンドが展開されてます。逆にその「躁」っぷりが端から見ている人に「おいおい、大丈夫?」とアブナサを感じさせるという、不思議なテイストを醸し出しているような。

最後に、収録曲にコラージュ作品があるCDを紹介します。
「ピチカート・ファイヴ/最新型のピチカート・ファイヴ」
「ピチカート・ファイヴ/最新型のピチカート・ファイヴ」
これは野宮真貴加入後第一作目のマキシ・シングル(当時はそんな言葉なかったけど)。「5.大人になりましょう」の喜多川隆+沼田元気による、主に邦画からと思われる「大人」という言葉のコラージュの嵐が圧巻。というかヒマすぎ。アルバムに収録されている同曲はこのコラージュがないのでご注意。ってことは絶版だから簡単には聴けないってことか!残念。
昔の邦画の録音ってなんか独特で、耳にすると当時の髪型・服装・車の形などがパッと思い浮かんでしまうけど、ここに収録されたネタもそう。解散間近のピチカートが向かった、60年代日本の風景がすでにここに。
「DOOPEES/Doopee Time」
「DOOPEES/Doopee Time」
ヤン富田が一瞬世間と交差した瞬間の記録、それがドゥーピーズ。ヤンさんはマジメだから小西さんのような色気はちょっと出せないんだけど、それを象徴するのが8.「LOVE SONGS」。「古今東西、LOVEという言葉が入った曲〜!せぇ〜の!」という1人山手線ゲーム状態で黙々とLOVEという言葉をカットアップしているその姿は、まさに「博士の異常な愛情」。
ヤン富田のアルバムは全体的にカットアップ的なので、興味を持った方は他のアルバムも。ただ、その編集センスは雑誌の編集者というより博物学者のそれなのでご注意。

(2003/12/08)